落日の紺緋色酒造にて…。
「クソッ!こんなに頑張って良い酒造っているのに、全く売れないッ!」
『一生懸命造った良い酒が売れない』
この現実に、杜氏congiroは頭を悩ませていた。
「クソッ!クソッ!分りもしないクソ共めッ!もう、こうなったらヤケクソだ!」
congiroは、売れ残った酒を桶に入れ、水と糖類と醸造アルコールを混ぜ、そしてさまざまな添加物をブチ込んでエキセントリックな三倍増醸酒を造った。
「どれどれ…プッ!不味ッ!こりゃー飲めんわ!アーッハッハ!しかし、分らんちん共にはこんくらいでいいだろうさ!」
そして、翌日…。
紺緋色酒造の営業は、この酒を飲んで何を思ったのか、カップに詰め始めた。
「おい、何してんだ?」
「社長、またゴッツイ酒造りましたね。」
「なんだ?褒めてんのか?」
「いいや、逆ですよ。どうしょうもないクソ酒っすね!ナンバーワンの糞ですよ!マジうんこっす!」
「で、だから何してるんだって聞いてんだよ!」
「どんなに不味くても売らなきゃ食えないでしょう。もうこの酒飲んで吹っ切れましたよ。酒って言うか糞汁ですけど。」
「フンッ!」
「糞だけに、ですか?」
「ああっ!?」
「い〜えい〜え!」
そして…数週間後。
「社長〜!クソカップ売れてますよ!」
「あん?」
「なんか、糞とか不味いとか前面に出したらかなりウケたみたいで。」
「…おい」
「イラストシリーズですけど、赤いカップにシャアの絵載せて”三倍!”って書いたやつがよく出てます。」
「(なんだ、オイ?)」
「ほかにも、最遊記のサンゾーってキャラいるんですけど、それのサンゾーカップもちょっと出てます。」
「(なんなんだ、オイ?)」
「で、これ意外なんですけどね、夏目雅子の方の三蔵、天竺カップがかなり出てます。古いファンついてますよね〜!」
「(オイオイオイオイ!なんなんだよ、それは!オイ?)」
「で、レギュラーのエキセントリッククソカップですけど、罰ゲームとか、嫌がらせに使われてるらしいです。あ、意外と飲食店の引き合いも…」
「もういいっ!」
バタム!
「クソッ!俺がやりたいのはこういうことじゃねぇんだよッ!こういうことじゃあ!」
バンッ!
「まじめに造ったものが売れねーで、糞みたいな三増酒が売れる?そんなことがあっていいのかよ!クソッ!」
バンッ!バンッ!
だが、私の想いとは裏腹にクソカップはそこそこ売れ続けたのだ。
そのおかげで我慢していたキャバクラにも行けた。
そこでもクソカップの話題はなかなかウケたりもした。
キャバのあと、高級マットヘルスに行ったのだが、待合室にウチの営業が居り思わず苦笑した。
おわり。