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congiroのパラレルワールド:大復活の純米酒(望郷編)

世の中から醸造アルコールが消えた。

「全ての醸造アルコールは新型ゴロニャーンウイルス滅菌用として使え!日本酒に使うな!」と國からの通達があったのである。
それは即ち、「日本酒は全て純米で造れ!」というお触れにほかならない。


「まさかゴロニャーンウイルスが元で念願だった全蔵の全量純米化が叶うとは!はぁ~、暗いニュースばかりの世の中に嬉しい出来事!生きてて良かった!」


しかし、その思いとは裏腹に、廃業する蔵は増加したのだ。

「いや、これは最適化さ…」

私はそう強がってみせたが、廃業の波は止まらなかった。

 

「なぜだ!?なぜなんだ!」

「フッフッフ、そんなことは純米酒を飲んで見ればわかる。」

「だっ、だれだ!」

「かつてのジュンマイダーの片割れ、神楢 直義(かんなら なおよし)といえばおわかりか?」

「まさか、あの伝説の!?先の戦いで命を落としたのでは?しかし、純米の盲信者だったあなたがどうして!」

「私はパラレルワールドよりやってきた"死ななかった神楢 直義"なのだよ。」

「ええっ、そんなことが!?」

「そして私は気づいてしまったんだよ。全量純米が幻想だったことを、そこに本質がなかったということを!」

「なんてことを仰るんですか!」

「では問おう、君の言う純米酒とはどういうものか!」

「それは…やはり、燗酒にしてもへこたれない、熟成で伸びる…」

「笑止!それがそもそもの間違いなのだ!」

「どいうことなのですか!?」

「では君は、全量純米化してどこの酒を飲んでいる?純米に定評のある蔵の酒しか飲んでいないのではないか?」

「それは確かに…そうです。」

「新たに全量純米化した、いや全量純米化してしまった蔵の酒は飲んだかな?」

「…いいえ。」

「では、普通酒や本醸造酒、アル添酒を好んで飲んでいた人はどこに行ったと思うかね?」

「え、それはその蔵の純米酒を飲んでいるのでは!?」

「甘い!上等な料理に蜂蜜をブチまけたくらい甘い考えだ!」

「ええっ!?」

「ここに普通酒、本醸造酒をメインで造っていた蔵の普通酒と純米酒を持ってきてある。飲んでみたまえ。どうだね?」

「普通酒は…うまくないです。純米酒は…やはりうまくないです。」

「では、うまくないという前提でもう一度試して欲しい。どちらがインパクトが強いか。どうだね?」

「それは…アルコール臭の強いこちらの普通酒です。」

「そうなんだよ。普通酒を日常飲んでいる人たちというのは、日本酒に美味しさを求める"嗜好層"ではなく、日々それしか飲まないと決めた"日常層"なのだよ。そのためには手頃な価格、ジャンクな味わい、スピーディーな酔い、この3つが不可欠!そして、この3要素は相関関係があり、どれかが無くなるだけで即座に瓦解するのだよ!」

「ええっ!?ではその"日常層"はどこへ行ったのですか!?」

「もう、完全にRTDに移行済みだ。戻ってくることはあるまい。」

「そ、そんな…」

「そもそもの話で言えば、アル添メインの蔵は意外なことに純米に魅力を感じていない。アル添と純米、その2つは全く別物なのだ。」

「なんということ…」

「そこに突然の全量純米化、アル添メイン蔵のモチベーションは即座に純米に向けられると思うかね?これまでの顧客を失ってまで!」

「いえ…それは確かにそうかも知れません。」

「実際、ここから先は想像がつかないレベルで蔵は減るだろう。」

「そ、そんな!」

「しかし案ずるな。最適化というのはあながち間違っていない。そこから新たな胎動があるのも確かなのだ!」

「ど、どういうことなのですか!?」

「これを見よ!」(ピカー

「これは世界の日本酒蔵分布図!」

「世界ではすでに純米蔵が羽ばたこうとしている!」

「えっ、日本は?日本はどうなるのですか!?」

「終わりだ。」

「へ?」

「新しい蔵が出来ないから終わりだ。人々には余裕がなく、極まった嗜好性だけが生き残る群雄割拠時代になり、値段は上がり日本酒から日常性は消え去る!」

「(ゴクリ)で、どうなるんですか?」

「今現在有名なところしか生き残らない。」

「そんな!」

「ではもう一度問おう!君は、全量純米化してどこの酒を飲んでいる?実は純米に定評のある蔵の酒しか飲んでいないのではないか?」

「くっ…何も、何も言い返せない!ですが、このまま純米化する前のままなら安泰だったとでも言うのですか?」

「いや、実はそれもない。残念ながら寿命が早まったかそうでなかったかの違いでしか無いのだよ。」

「え?じゃあ、私の不安は何なんですか?というよりあなたは何を言いに来たのですか?なんの希望もない事実を突きつけて私に何を言いたいのですか!」

「からかいに来ただけだ。」

「へ!?」

「からかいに来ただけだ。」

「グググ…」(プルプル

「からかいに来ただけだ~ぞっと!」

「バカー!」

「ハハハ!」

 

夕日を背に駆け回るふたり…

「ハハハ!」

「アハハ!」

キャッキャッ!

 

ここから突如始まる濃厚なBLエンド

~fin~