佐賀県で行きたいところが数箇所ある。
18きっぷの余りがある。
もうこれは佐賀ツアーに行くべきだろう。
しかし、佐賀日帰りツアーはとにかく筑肥線の接続が悪い。
行きたい場所だけで言うと、唐津・伊万里・武雄温泉・鳥栖・佐賀で、単純に距離だけで言えば楽勝で一周できそうな感じなんだけど、とにかくどう予定組んでも接続が全然うまくいかないので、どこか諦めなければいけなかったりするわけですよ。
朝一で行って終電まで乗っていれば回れるんだろうけど、行きたいところが閉まっているとしょうがないしね。
そして今日は18時までに帰って来いという指令を受けているので、そもそもがそんなに回れない。
おそらく18きっぷの金額ちょっと超える程度の距離しか回れないんじゃないかな?
で、死ぬほど考えて予定を組んでみたんだけど、結局のところ西新(福岡市内)から唐津まで行って筑肥線で伊万里まで行ってまた戻ってくるというピストン方式と相成りました。
行きたいところは酒屋と酒造なので大体9時オープンと考えると、あんま早く行ってもしゃーない。
まずは唐津へ向かう。
唐津から伊万里方面の筑肥線に乗る。
JRはこのY-DC125のTシャツを早く作るべきである!
松浦川と並走する筑肥線。
肥前長野駅では車窓から牛が見える。
そして伊万里市の桃川駅(もものかわ)で下車。
桃川駅の周りに商店は一軒もございません。
桃川駅から歩いていろいろと街の景色を見ているが、これはもう見所しかないという感じだ。素晴らしい。
福岡市内から1時間強で日本の原風景みたいな風景が広がっている。
残念ながら全然賑わってはいないんだけど。
見よい。買いよい。(見やすい買いやすいの意)
俺は晴れ男ではないので旅行時はわりと曇り雨が多いのだが、こういう風景はそういう天候のほうが映えるような気がせんでもない。
無言でひとり歩いているのだがとても楽しい。
そこから松浦川を越えてちょっと歩くと武雄市となる。
ここまで伊万里市。
本日一発目の目的地、牟田酒造場へ向かう。
こ、これがあの有名な看板!
右側に入ってちょっと歩くと牟田酒造場なんだが、途中も見どころが多い。
↑こういう持ち送りは初めて見た。
到着~!牟田酒造場!
蔵の売店に入ってみると誰も出てこない。
「すいませーん!ごめんくださーい!」で5分くらい反応がなかった。これは酒造あるある。しょうがないのでしばらく写真タイム。
写真撮ってたら蔵の方が来た。
ところで牟田酒造場には何の用かと言うと…
そう、正解!
粕取焼酎です!
粕取焼酎を買いに行きました!イエー!
牟田酒造場へはあの看板を見に行ったわけではなく粕取り焼酎を買いに行ったのであった。
この紹介ページ(http://ww7.tiki.ne.jp/~katuhiro/new_page_13.htm)にもあるようにウン十万円のデッドストック瓶があるというのでそれも見たかったのだ。
あとどうでもいいけど、いいここちが気になる…気になるw
で、いろいろ話をしていると、もうこの蔵での自醸はしていないとのこと。
自醸は40年くらい前までしてたらしいが。
つまり、どういうことかというと…オール桶(OEM)ってことですよ!
俺くらいのステージのマニアになると桶をも喜ぶのであるよ。
それでも廃業→更地化せずに蔵を保持してくれたことへの感謝とかそういうの色々あるじゃない?桶はOKに通ずるのよ?分かる?アンダスタン?アー?
ところで桶っつーと1つの蔵から取るのが普通なんだけど、牟田酒造場は一味違う!
佳撰と上撰で製造元が違うのだ!そのこだわりがアツくない!?しかも佳撰は酸味料入りですよ!糖類のみor糖類+酸味料は今まで幾度となく見てきたけど、酸味料のみってのは初めて見たよ!
しかも粕取焼酎も違う蔵の桶酒ですよ!?消費量などほぼ皆無の粕取にどんな需要が!?それを思うと思わず目頭がアツくなりましたね!
「融米造りで酒粕が出なくなった、酒粕の値段上がった、消費量が激減して需要が事実上消滅した」などの理由で粕取焼酎を造らなくなったらしいのだけど、でも残してくれる心意気が嬉しいじゃない!
もうこれは当然買うよね。桶粕取とかアツすぎるぜ!
そしてこれが自醸してたころのデッドストック粕取り焼酎、本部!
恐らく粕取焼酎界1位の値付けだと思うが、ご主人曰く「これは取っとくつもりで売る気が無いからこの値段にしてる」とのことだった。
でもこの値段だと買えるやつがいそうな気がせんでもないなw
しかし、かつて自醸してたころの粕取は無濾過ゆえ白濁してたらしいぞ。
俺はそれが欲しいな~復活せんかな~
そしてこれが終売のためデッドストックの麦焼酎いいここち。
「どこかで見たような?」とか無粋なこと言うんじゃねーゾ!
おおらかな時代もあったんやぞ!主人は「ウチが先」と言っていたがw
いや~、来て良かった。
良い買い物ができたし、面白い話も聞けた。
これからも変わらずに続いてほしいですね。
ありがとう牟田酒造場!
そして牟田酒造場から桃川駅に戻る途中、地図アプリにも出てこない1軒の酒屋があった。じーちゃんばーちゃんが昔からやってるような酒屋。
当然、現代的なセレクトショップと違って様々な商品があるわけではない。
しかし、おそらくこれはアレだな…という予感めいたものがあったので入ってみた。
ごめんくださーい!と中に入ると、まるで親戚のように気さくなばーちゃんが出てこられた。
ペットのお茶を買いつつどうということのない世間話をする。
そして「こちら、昔は酒造じゃありませんでしたか?」と聞いてみた。
すると…「ええ、そうですよ。あの看板がそれですばい。ばってん、他ん所ぃ卸しちょったですけどねぇ。」
やったぜ正解!しかも桶(OEM)蔵!
前述の「予感めいたもの」というのは、今まで見てきた小規模蔵と似たような雰囲気があったというだけで確信ではなかったんだけどね。
辞めてしまったのは45年以上前なので詳しくは覚えてないとのことだったが、昔は他にも蔵があったとか当時の話を色々聞くことができた。
やはりこういうやり取りが現地に赴く醍醐味よなぁ。
しかしこのお店、新年は2日から開いてたようで。
立派な座敷もあったし地域の人たちの集いの場になっていたのかな?などと思ったりした。ばあちゃんありがとな~!元気でな~!
さぁ次に行きますか~。
冷たいペットのお茶を飲みながら先に進みます。
いや~、しかしいいですね。
上伊万里駅から歩いて1km程にある大坪町の樋渡酒造場へ。
ここは去年、池袋で開催された日本酒フェアに出品してて主に俺のド肝を抜いた蔵だったのだ。
日本酒フェアだというのに(細かいことを言えば規定から外れる)雑酒1本での出品。味もかなりフリーダムの極みで俺の中で珍品中の珍品でした。
近年、佐賀の酒が持て囃されているが、それとは別のベクトルで俺のハツを鷲掴みにする蔵が牟田酒造場に続き、こんな近くにあるとは驚きである。
真相を究明するため、酒造へ向かったのであるがー。
ここで合ってるの?杉玉も無いし看板も無いぞ?
でも引き戸から薄暗い部屋を覗いてみると見慣れた赤い瓶が見えるような気がする。ここやな!
「ごめんくださーい!」
「ハーイ!」
「私、これこれこういう者で~」
「はいはい」
「(周りを見渡す)…ん~?」(画像右下)
「んー!?んんんんん????」(画像左下)
「あの…ひょっとして、角打ちやられてます?」
「地元のおじいさんたちが飲むだけですけど、飲めますよ?」
いっただっきまーす!ハハハ!
ていうか万里長(マリチョウ)…なんだこれハチャメチャにうまいんだが!!!
「水ですかねぇ?ウチんとこはあのとんがった山の水で造ってるんですよ~。(佐賀の酒は甘いのが多いけど)ウチのは甘くないんですよ~」
「ほ~」
普通酒の本文とも言わんばかりの知らんうちにガンガン無くなるタイプの魔性の酒です。コレはヤバいぞ!
本来の目的である大洋潮(タイヨウチョウ)なんだけど、25度くらい度数がある。さながら焼酎である。
何故こんなものを造ったかとかは聞けなかったけど(聞き忘れたw)、とにかくこれはそこそこの需要があるらしく、4合瓶と一升瓶以外にもスキットル形の瓶もあった。かっちょええな…
そして面白いのが、この大洋潮に原酒があることだったんよね。原酒なのに赤瓶より度数が下がるという。なんなんw
んで、棚には並んでなかったんだけど、大洋潮には普通酒も有るらしく、それも見せてもらった。
あとはとりとめのない雑談をして時間がどんどん過ぎていきましたね。
う~ん、どれ買ったら良いんだろうか?万里長はうまいし、太洋潮もなんとも言えん面白さがあるしな~。
しかし万里長うめーなゴクゴク。
酒だけで飲める酒!うまかった!
結局、酔った勢いも手伝って全種買ってしまったw
女将さんも楽しくて良かった。
イマドキ系ではないけど確実に俺の中でクる酒でしたよ。
樋渡酒造場、これからも注目していきたい。サイコーだ!
さて、そろそろ昼めしにしましょうか。
何処に行くかはもう決まっているのだが。
ここは伊万里市大坪町なんだが…
!?!?!?!??!??
そして目的の店に到着!それがここだ!ドライブイン鳥!
名前良くないっすか?
congiroさん、『ドライブイン○○』って店があると入っちゃう病(ステージ2くらい)なのよね。
しかし、入ってみると俺の想像するドライブインの簡素な感じではなかった。
俺が想像するドライブインは、喫茶店崩れの食堂みたいな店だったり、トラック野郎御用達のうらぶれた大衆食堂だったり、コインゲームが大量にある自販機ばっかの店だったりとかなんだけど、ここはなんというか…焼肉屋ですw 鳥専門なので焼き鳥屋か。
座席はカウンターとか相席みたいなのがなくて完全にグループ席みたいのしかなくて、俺ひとりなのに6~8人部屋に案内されたわけです。
ん~、昼時のかきいれ時にこれは申し訳ないな。
一品多く注文してビールも注文して一気の飲み食い!
15分くらいで平らげた!良客!
いや、でもここは良かったですよ。安い早い美味い多い。アルコールも安い。
機会があれば複数人で来てゆっくり飲み食いしたいですね。
さてと、時間まで伊万里のまちなみ見ながら酒屋巡りしましょうかね。
伊万里は言わずと知れた伊万里焼の地なんだけど、あんまり賑わっている感じではなくてわりと寂れた感がございます。
ま~、焼き物を買うという文化も斜陽化しとりますもんねぇ…
ではまた筑肥線にて唐津に向かいましょう。
スヤ~
着いた!
唐津です!
まずはまちなみ見ながら酒屋めぐり!
うむ、なかなかええぞ。
そして本命の鳴滝酒造へ!
駅からちょっと遠い。
しかも心臓破りの坂まで有る。キツー
「ごめんください、こちら小売やってますか?」
「やってますよ~」
「粕取焼酎の原酒はありますか?」
「すいません、製造終了しちゃって無いんですよ」
「oh…もう粕取焼酎自体やってないんですか?」
「いえ、毎年造っているわけではないですけど、止めてはいません」
「ということは、また原酒も造る可能性がある…ということですか?」
「そうですね、お約束はできませんが、需要があれば…」
そこからは粕取焼酎の厳しい現状とか色々お話しいただけたりしたんだけど、蔵の矜持としては正調粕取焼酎の文化を残したいというのもあって止めるつもりはなく、またやりたいとのことだった。
ただ、とにかく厳しいことだらけであるということは理解した。
「せっかくなので、粕取のせいろ式蒸留器見ますか?」
「えー!良いんですか!見ます見ます!」
かくして倉庫へ誘われるcongiroさん。
「(日本での消費は減ってるけど)粕取ってむしろ海外向けと思うんですよね~」
「そうなんですよ!グラッパとかありますからね~!」
見せてもらったそれは思ったよりも遥かに小さいものだった。
なるほど、あんま大きくてもアレだもんな。
こういうので造っとるんやな~パシャパシャ。
そして最後に粕取の造り方の資料とかいただき、名刺まで頂いたけど、対応してくれた方は代表取締役の方でした。
ありがとう鳴滝酒造!!!
しかし、これはもう俺がせっついて粕取ユーザーをひとりでも増やすしか無いな。
粕取焼酎に興味持たれた方は、とりあえず新橋の玉箒か東高円寺のドギーブギーに行きましょう。
玉箒では他の酒も交えて粕取焼酎の面白さを教えてくれますよ。
ドギーブギーは圧倒的な粕取焼酎在庫で飲み方とともに教えてくれるでしょう。
ぶっちゃけ両方とも行くと良いですよ!
ところで鳴滝酒造は唐津の北口を出て商店街の横にちょっと入ったところに『太閤』という売店がございます。蔵は遠いので皆さんはこっちに行くといいと思いますよ!
唐津くんちカップ酒シリーズや1合瓶もございます!
俺はとりあえず1合瓶買いました!
さて、残り時間で唐津散策。
酒屋~
まちなみ~
銭湯~
うお~、時間がねぇ~!!!
行きたいところに思ったように行けず、タイムアップで帰宅となりました。
恵びす湯は行きたかったのだけど、開店が17時だから今回はどうやっても行けない(T_T) マジで行きたいから次回はそれ目当てに予定組もう。
そして唐津から家までは電車一本。
今回の旅路は乗り換えがほとんど発生しなかったので楽は楽だった。
夕メシは鳴滝酒造の聚楽太閤1合瓶でやりますかね。
うむ、これはかなりのオールドスタイル!
こういうのもいい。瓶がとにかくいい。
いや~、今回の目的の3蔵はどこも想像を超える価値があったな。あの桶酒屋も。
俺としては短いながらも良いツアーでした!!!
~fin~