久々の酒レビューっすな。
兵庫県神戸市は東灘区の剣菱酒造が造るお酒でございます。
飲んだことはないけど見たことはあるランキングがあったら5指に入るのではなかろうか?
それだけ剣菱マークで認知度の高い酒でございます。
そして日本酒クラスタと言われる人たちがあまり飲まない酒でもありますね。
しかしこれは、ヒネと熟成を語る上で最も重要な酒なのではないか?とcongiroさんは思っております。
なんせ日本のどこでも入手できて、大して高くないからな。
しかしね、よくスーパーでこんなの扱うね!って思うよ。
スーパーで売るにしては明らかに酒質が太いんだよね。
それに元からそこそこ熟成感があるし、割りと飲み慣れた者向けの酒ですよ。
俺も古酒開眼が無かったらこの酒をどう評価していたかはわからん。
だが、開眼後の俺が飲む限り、これはかなりのモンだと思うんですよ。
この酒の一般的な魅力は、『どこでも買えて高くないそこそこ太い酒』だと思ってるんだけど、俺みたいな者からするともうひとつの素晴らしい魅力があってね。
その魅力とは、変化の早さなのよ。すぐヒネるし(すでにヒネてるともいう)すぐ熟成する。
そしてそれを受け入れる酒質であるということ。この変化の早さ、変化を受け入れる奥深さが確実に剣菱の魅力となっとるわけですよ。
短期間に味の変化を楽しめるんで、古酒に向かって突き進む酒としては理想的な形のひとつなのよね。
それと剣菱には1.8Lで5,000円の瑞祥って純米古酒があってね。
それはもう本当に素晴らしい古酒なわけですよ。
この安い剣菱ーズも放置しとけば瑞祥にそれなりに近づくんじゃないか?ってそういう期待ができるわけです。その前にだいたい無くなっちゃうんだけど。
味についてだが、極上黒松剣菱と剣菱(ノーマル)があるけど、そんなに大きな差はないかな?
比べて飲まなかったら俺は気づかないかもしれない。
ちなみに松の絵がある方が極上な。
極上黒松剣菱
アルコール感が比較的強くてヒネ感と熟感、ドライフルーツ感あり、みりんっぽさ少々、甘い辛い。
太い酒とは言ったけども、実際のところは軽妙でございます。
ノーマル剣菱に較べるとやや上品なので、「飲みやすい」と言われそうな感じ。
剣菱(ノーマル)
開栓して1年経ってる。
極上より低いアルコール感とそれより強いヒネ感(放置して結構経ってるから当たり前だが)と熟感、フルーツ感はややあって、みりん感はそこそこ。こっちも甘い辛い。
開栓したてだとそこまで太くなくて軽妙だった。
極上よりも存在感は強い。
燗上がりはどっちもする。
燗が冷めるとチョコ感が増す。
それはヒネが活きたカタチだと思っている。
俺はどっち選ぶかっつーとノーマルかな?人にあげるなら極上かな。
どっち貰ったら嬉しいか?だったら、どっちでも嬉しいので買って下さい。
ちなみに極上黒松剣菱は、DSで期限切れ扱いで安く売ってた。
ハハハ、そっからが真骨頂というのに!
あと、剣菱の興味深いところは、どこでも手に入るしどこでも売ってるのに買ってる人を見かけないのよ。
どうでもいい食堂とかどうでもいい居酒屋でも見ないんだよね。
普通、スーパーに売ってる酒って誰かが買ってるし、そこらの飲食店で『酒(一合)300円』で見かけるもんなんだけど見ないのよ。
そこらへんでお目にかかる酒って、ほとんど大関白鹿黄桜菊正宗あたりなのよ。
こいつらと並ぶメジャーどころなのに全く購入層を見ないというね。
でもいつの間にか在庫は減っててさ。
それを考えると、たぶんこれはスーパーにあって特定のファンが付いてる酒なんだろうねって思うわけですよ。
安くて旨くてどこでも買えてマニアックな要素も持ってるって、これ以上のことは無いと思うんよね。
ところで、剣菱については飲まずにマズイって言ってる人が多いです。
大手で一緒くたにされてるからね。『大手=マズイ』で一括りですよ。
でも剣菱は大手で一括りするには全く違う酒質です。興味ある人は飲んでみてください。
それでもたぶん今時の酒を好むかなり多くの人はマズイと言うかもしれませんな!ハハハ!
現代的な酒でもないし、メジャー酒においてはかなり異質だからな。
でもな、その反対に多くの固定層に支持されとるのよ。
そんで俺みたいな古酒クラスタは別の意味でも支持しとるのよ。
別の意味の支持っつーのはアレだ。
俺は剣菱を古酒や熟成に入門するのに最良の一手だと思っておるわけですよ。
でも、熟成と言っても純米燗酒人育成酒ではなくて、確実に古酒人育成酒と思っててね。熟成は熟成だけど毛色が違うんよ。
剣菱好きな人はたぶん古酒も分かってくれるんじゃなかろうか?
そんな狭い狭いマイナーな古酒の世界にメジャー界から人知れず架け橋をしてくれてる奇跡的なお酒なのでございまよ。(蔵はそんなこと意識してねーだろうけどよ!)
俺は「一周回って剣菱に行き着いた」ってフレーズを周りで聞きます。
確かに慣れが必要な酒ではあるけども、日常性とマニアックさが同居しているものでこれだけいろいろ容易で奥行きがあるものって、売上以外の部分でも正当な評価を得て良いと思うんですよね。
最後にもうひと褒め。
剣菱においては、ヒネがそのまま魅力に転化してしまう酒の筆頭であり原点にして頂点だと俺は思っている。
だから俺が評価する。
ハッハー!もっと売れろ〜!
スーパーかコンビニで迷ったらこれ買えや〜!
とにかく慣れるまで飲め〜!
そしてついでに古酒に目覚めろ〜!