福岡県は久留米市にあった朝凪酒造の造る日本酒ですな。
去年のいつだかに廃業したので、もう市場には在庫分しかない。
廃業前に飲んだ事あるのは捌の本醸造なので、特別純米は初となる。
裏ラベル
捌の意味が載ってる。
その昔の話だけど、行きつけの炉端焼き屋に『捌』の本醸造が置いてあって、そこで初めて飲んだときに「あー、これうまいなー」と思って、店のオヤジに聞いたら「近くの酒屋に置いとるよ」と教えてくれて本醸造を買ったんだよね。
なにぶんその頃は意識して日本酒を飲んでた時期ではなかったので、現在では色んな記憶とごっちゃになってて、『捌』のことは良く切れる酒って程度でしか覚えてなかった。
そして、ここ数年は近所の酒屋から『捌』が消えてて、違う酒屋でたまたま買った古酒が朝凪酒造ので、その後の調べで「あっ！捌の蔵か〜！」って思い出したんだよ。
それから今年に入って朝凪酒造が潰れたというニュースを知って「ああっ、しまった…！」と。
そういうわけで、昔の記憶をたどるためにもう一度飲みたいと思って買うに至ったわけですよ。
捌にはシリアルナンバーがついとります。
これは№934っすな。
というわけで、初の特別純米となります。
24年1月だから１年経ってるけど、これ買った店は冷蔵庫管理だったので、殆ど変化は無いはず。
特別純米はどういう味なのか？
…あっ、これはアカン！
いや、不味いってことではない。
これはどう考えても福岡でウケる酒じゃない。
ラベルにはそんなこと一切書いてないけど相当古酒然としてますな。
みりん的な熟成感を奥底に秘めつつ、かなり特有の酸味をもつ超趣味酒。
レギュラーに近い商品なのに超個性派。
熟成酒・古酒、そっち方面の日本酒は色々あれど、この酒の個性はその中でも群を抜いて際立っている。
一言でいってしまうと、完全に俺向けの酒です。
つまり、一部マニア向けの酒。
常温以下の温度だと、その際立つ特徴的な熟成感と酸味に「これはダメになってるのでは？」って感想言う人多そう。
常温で飲むと特徴がちょっとまとまってなくて、そんなに出来の良い酒には思えないんだけど、しかしその特徴がまとまっていないのが良い意味で『捌』の個性を現しているのよ。
そして燗、特に熱めの燗で完全にまとまる。
これはマジで旨いですよ！すげー旨い！
そしてこの味に慣れると、常温のヘンテコな個性がどうにもたまらん味に思えてくる。
なんと言うのか、燗で飲むと『個性派一家のまとめ役の長男』みたいな感じなんだけど、常温だと『そこに現れた暴れん坊の三つ子！』みたいな。
正直言って、『捌』の理解者はほぼ居なそうだよ。少なくとも福岡市内では！
そんでファーストインプレッションで、「ダメダメ！ぜーったいダメ！」って人多そう。
そして数は少ないけど、確実に「やっべ！超好き！超超超好き！」って人が居る。
こういう商品ってのは誰かの紹介をもってしか日の目を見なそうだな。
確実に俺ランキングに入る部類なんだけど、うーん。
なんで、こういう一部のマニアを唸らせる酒を造る蔵が潰れたかと言うと、ひとことで戦略ミスだと思うんです。
もしくは、福岡県に蔵があった事が原因と言うか。
これはかなりマニアックな酒ですよ。
意味を分かってくれる一部の人にしか評価されないでしょうよ。
一般ウケする酒でもないし、今の流行となる華やかなものとも違います。
ただ、一定層のマニアには確実に絶対的な支持を得られます。
しかし俺は福岡にこういう超個性的な酒があったという事を嬉しく思いますよ。
なんかね、福岡って酒ドコロとか言われてる土地の一つではあるのだけど、出来損ないの淡麗辛口造ってる蔵が多い＆多かったのよね。
最近でこそ、そうじゃない方向性を示す蔵がいくつも出てきてるけどさ。
この『捌』に関しては、いきなり東京に出ていれば評価する人も多かったんじゃないかな？
なんせ世界で一番マニアの居る土地なんだから。
『捌』は決して出来の良いバランス型の酒とは思わんのだけど、これだけの個性を示せる蔵はすごく貴重なんだよ。
もし、もし何かのきっかけで復活することがあったら、酒質を変えずに戦略だけを変えてやってほしいなーと思う所存。いきなり東京で営業をかけて欲しいな。
戦う場所次第では、確実に一部のマニアの心を掴む酒だから。
特に東京で売ってたら、俺みたいなマニアのフラグシップとなりえた酒かもしれんのだよ！
変な方向に褒め過ぎかも知れんが、まぁいいか。
ついでに俺の友人の感想も載っけておこう。
https://twitter.com/Neutralair/status/302666896975753218
